2015年10月に、長らく難航していたTPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement = 環太平洋戦略的経済連携協定)が大筋合意に至り、成立・発行する見込みとなりました。
EPA(Economic Partnership Agreement = 経済連携協定)であり、主に自由貿易に関する様々な協定を一括で定めるTPPですが、為替への影響はどのようなものが考えられているのでしょうか。FX取引をしている方にとっては必須の知識となります。

今回はTPP成立のあらましと、為替への影響を見てみましょう。

TPP成立までのあらまし

TPPの発端は、2006年にシンガポール、ブルネイ、チリとニュージーランドの4カ国の間で締結・発行されたP4協定を起源とします。
このP4協定は貿易関税の9割撤廃をはじめとして、加盟国間での自由貿易の促進・拡大に関する様々な協定を一括して定めたEPAでしたが、2008年にアメリカとオーストラリアが相次いで参加表明をしたことで、環太平洋諸国間を取りまとめるEPAとしての側面が強くなりました。日本は2010年に民主党・菅直人政権のときに参加表明をしたものの、翌2011年に発生した東日本大震災の影響などにより実際の交渉参加は当初の予定よりも遅れた2013年からとなりました。
この間に民主党政権から自民党政権への政権再交代が起こり、解散総選挙の時点ではTPPに参加しないとしていた自民党・安倍総裁は、政権再交代後の2013年2月にアメリカのオバマ大統領の会談後、「TPP不参加の前提条件が変わった」として、同年からの交渉参加を表明しました。同年7月に開催された第18回会合から本格的に交渉参加を果たし、幾度もの交渉の末、2015年10月末の大筋合意へとこぎつけました。

TPPの成立・施行と為替への影響

このように自由貿易を推進するためのEPAであるTPPですが、貿易に欠かせない要素である為替取引には、どのような影響があると考えられているのでしょうか。
基本的にTPPは自由貿易の促進を大きな目標とするEPAであり、元となったP4協定から、関税の9割撤廃をはじめ自由貿易を促進するための様々な条項がありました。大筋合意に至った内容では農作物や知的財産などのいわゆる「重要品目」では関税撤廃がなくなったか、ある程度の猶予が設定されましたが、最終的には関税撤廃・自由貿易促進の方向に動いていることには変わりありません。

自由貿易の促進が為替取引にどのような影響を及ぼすかは正直なところ未知数です。技術力が高いと言われている日本製品の需要が大きくなるため円高傾向に進む可能性もありますし、反対に市場シェアを他国に奪われて円安に陥る可能性も否定できませんが、円高円安のどちらに進むとしても、TPPへの参加自体が為替市場では材料視されることは確実です。

1980年代末期のソ連崩壊に伴う冷戦体制の終結により、世界は特にアメリカを中心とした経済面での自由化が進み、今後もその傾向は続くと見られています。
この自由化の流れの中でもTPPは重要なEPAの1つであり、TPP参加の可否そのものが現在の経済体制に積極的に関わる意志があるかどうかの判断基準の1つと言われています。仮に参加を見送った場合、その国の通貨の価値は低く見られることとなり、参加を表明した場合は通貨の価値は維持されるか高くなると言われています。最も身近な例が日本と韓国であり、TPP参加と交渉の主要な国の1つとなった日本に対して、米韓EPAをはじめとする2国間交渉だけにとどめた韓国は、短期的に見ると為替レートは大きく下落しています。

おわりに

TPP参加に伴う為替取引への影響は、TPPが実働するまでははっきりと分かりません。しかしTPPの参加の可否自体が材料視されることもまた事実です。
今回は有利な方向に働きましたが、今後どのように推移するかは不明瞭であるため、FX取引・為替取引をしているのであればその動向には注目するようにしたいものです。